「政治家」辻政信の最後―失踪「元大本営参謀」波瀾の生涯

すこし,マニアックな本.しかし,彼はノモンハン事件からガダルカナルなど太平洋戦争の主な戦いに大きく関与した参謀の一人であり,戦後における自己美化によって大きく批判を受けている.とくに「ノモンハンの夏」での悪役ぶりはすごい.
この本は戦後の動きを追っている.彼は石川県の出身で,戦犯指定をうまくくぐり抜け(彼よりも罪の軽い人が多くなくなっているというのに),無所属から立候補し,持ち前の演説能力でトップ当選を果たしてしまう.やはりただものではない.
その後,吉田茂自由党の親米路線を批判し,共産圏への国交樹立を目指す鳩山一郎民主党に合流.
持ち前の行動力で各国首脳と次々と会談し,第三世界の結集をよびかける.しかし,岸首相の日米安全保障条約の再延長を批判したため,自民党を除名されてしまう.
その後は,学生運動に参加している学生を海外に連れ「洗脳」したり(洗脳というのは少しかわいそうな気が,むしろ当時の学生の方が単に世間知らずだった竹では?),海外を飛び回るが,ラオスにおいて行方不明となり,現地の一部勢力により暗殺されたのではないかといわれている.
非常に興味深い戦後の生き方であると思う.正直に言えば,戦後の行動については,私も共感する部分が多い.
極端な潔癖主義というのも意外だった.いや,すべての彼の行動は,むしろ潔癖であり,真面目な人だったからこそ,なのだろうか?