禁断の聖書:ユダが残した福音書の衝撃!

ナショナルジオグラフィックチャンネルの番組.なんか,と学会のネタにされそうなタイトルだが,内容は割とまとも.原始キリスト教においては福音書がより多く存在し,そのなかでもユダの福音書というのがあったと.この福音書は現在の聖書にはふさわしくないために,時の教皇から批判され,聖書には採録されなかったらしい.
そもそもイスカリオテのユダは背教者として,キリスト教徒からは蛇蝎のように嫌われている存在だが,本来はそれほど悪い存在ではなかったという.それが,だんだん悪く扱われていったのは,当時のキリスト教の立場にあった.つまり,ローマ訂正下において苛烈な弾圧を加えられていたことに頭を痛めた教皇が,教徒を守るために,ローマと厳しく対立していたユダヤ人と信仰をはっきりと切り離し,ローマ人に融和的な物語の構成になったという.たしかに,キリストを磔にするのはローマ人の提督であるピラトであるはずなのに,聖書ではむしろユダヤ人が悪いことになっている.
では,ユダの福音書とはどういうものであったか.それは,ユダが本当にキリストの教えを正しく理解し,磔にすることを命じたのはキリスト自身だという.それに従ったのがユダだ.とされる.これは,当時のグノーシス派の考えに沿った教義らしい.もちろん,グノーシス派自身は自らこそが正当的なキリスト教であると主張していたが.
とても面白く,興味深い物語だ.とくに,キリスト教自身が「赦し」であるとか,「原罪」とかいっているのに,「ユダ」という存在をひたすら忌み嫌い,攻撃的になるのは,以前から理解しかねるところであったが,こういう解釈がでてきたときに,キリスト教徒はどのような反応を示すかに注目したい.