東京裁判

ヒストリーチャンネルで夕方の18時から22時過ぎまでやっていたのを見る.何度か地上波で断片的には見ていたはずなのだが,今回全部見ることができた.映画は東京裁判だけではなく,その元になった事件の映像を交えながら,進んでいく.そのため,東京裁判における被告一人一人について細かく語られていない.ナレーターが要約を述べてしまうことが多く,もっと多くの人の肉声が聞きたかった.
ただ,重要人物の肉声を拾うことができ,本の中でしか知らなかった人の声がいくつか聞けた.とくに,より初めの方に出てきたBC級裁判の山下奉文大将,荒木貞夫大将,東條英機大将の声が印象に残る.
アメリカ人なのになぜか日本人の弁護にものすごく積極的な弁護人たちの奮闘も少しだけ写っていたり,例の東條の失言?からキーナン検事が焦って,あわてて天皇訴追を免れるための発言をしてもらうくだりもあり,おもしろい.ただ,もうすこし本当のやりとりを見せて欲しかった.
また,東條を単なる悪の親玉というレッテルで終わらせるのではなく,戦後になっても主張を一貫させていたこととをしっかり述べ,防衛のための戦争という難しさがある,と説明していたナレーションはよい.これらの人たちが悪の権化で,日本を悪くさせてしまったというのなら,ものすごく話は簡単なのだが,かならずしもそういうものではないところが,いまでもこの世から戦争がなくならない理由であろう.
この映画はベトナム戦争の写真で終わる.実はこの戦争は日本が起こしたこの戦争と図式がよく似ている.謀略に始まり,押しつけに近い大義名分をもとに傀儡政権を助け,やがて失敗していく.異なったのは,アメリカは負けなかったということ.だから,ソンミ村を焼き払っても,別に罪に問われることはなかった.東京裁判A級戦犯の人たちは,アメリカに対して勝機はあると考えて指導した戦争に無惨に負けて,亡国寸前までいったということに,しいていえば責任があり*1,「平和に対する罪」などというふやけた罪などは,これだけ世界に戦争が溢れている中で空虚なものであるといえる.

*1:数人の人はそうは言い切れないけど