実務補習2回目

実務補習の2回目が終わった。今回は福祉関係の小規模企業が対象となり、新規事業の提案がメインとなった。福祉関係の仕事の特徴は、福祉というだけあり、利潤の獲得の最大化はモラル上できないということである。介護保険の制度もあり、サービスの差別化はあまり行ってはならない。むしろ、一定の報酬で一定のサービスを行うようにしなければならない。そのかわり、できるかぎり競争は排除するように、新規業者の参入を制限しているため、参入障壁は高い。例えるなら、公務に近い業界である。
報道では、福祉に従事する人たちは過酷な労働で安い賃金のため、離職率が大きいという話があったが、一概にはそうでもない。たしかにあまり高くはない賃金とはいえるが、離職率はやや他の業種に比べれば高い程度だ。ただ、離職する人は勤続期間が短い一方で、続けられる人は、勤続期間は長い。うちの業界よりも離職率は低いくらいかもしれない。
診断企業の業績は安定していた。大幅な売り上げ増は望めない中でも、大幅な落ち込みもない。リピート率は100%で、お客さんが亡くなるまでリピートしてくれる。そういう面では、とてもいい仕事ではあるが、そこから伸びるためには、介護とか福祉という分野はモラルとして問題がある。
そこで、別の分野だが、相乗効果が得られる分野を提案した。それは、被介護者ではなく、介護者へのサービスを提供するような業態への展開である。介護者は介護保険では援助されない。要介護の状態が悪くなればなるほど、介護をする人の負担は大きくなるだろうし、一方、介護される人も介護者へ負担をかけていることが重圧になっているのではないかと考えた。そこで、介護者にもっとリラックスでき、気分を変えられるようなサービスを提供できないかと考えた。ただし、あまり積極的にやり過ぎると、「抜け目のない」「がめつい」福祉業者というレッテルを貼られかねない。
福祉業のポイントは、利潤の最大化ではなく、サービスを受ける人の満足度を上げつつ、従業員の負担をできる限り少なくして、働きやすい環境作りをすることだろう。そういう意味では今回の診断企業はうまくいっていた。仕事は忙しそうだったが、社長は元気そうだったし、それなりの利益も上げていた。だから、新規事業がやりたいのだと思う。
しかし、新規事業を提案する際に私たちが考えるのはできる限り現在のその企業が持つ強みを生かした業種に進出をすべきである。ということである。たとえば、いままでの顧客に対して、新たなサービスの提供をしたり、同じサービスを別の顧客に提供したりするなど。しかし、それをすることで利潤を得ることが、変な噂になって、現在のうまくいっている業務に影響を与えかねないというのが、大きなリスク要因となる。それはわかっていたが、今回はあえてそれは考えずに、新規事業の方向性と具体的な案をいくつか提案することにした。
実は、社長の仕事の関係で、補修最終日にあまり時間がとれなかったため、今月の別の日にもう一度時間を取ってもらうことになった。そのときにどのような感想を言ってもらえるか楽しみだ。