- 作者: モハメド・オマル・アブディン
- 出版社/メーカー: ポプラ社
- 発売日: 2013/05/16
- メディア: 単行本
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この本がいいのは、日本人からするとあまり「よくない」ことが書いてあることである。例えば、スーダンはエジプトの南であり、イスラム教圏であることから、著者もイスラム教徒なのだが、日本生活に馴染めないことと行き詰まりから、お酒を飲んでしまう。それも1回や2回ではなく、何度も。私達には宗教上の禁忌はほとんど存在しないから、それを破るということの気持ちに触れる機会が少ないだけに興味深い。また、目が見えない理由はスーダンの近親婚による遺伝子異常だという。こういうこともあまり記述しないものだが、ふつうのことのように書いている。
最後は、結婚をすることになるのだが、その結婚の過程も日本とはまるで異なる。日本ではありえないが、実際に会うこと無く、電話だけで結婚してしまうのだが、それでも二人は幸せのように思える。そして、最後は東日本大震災に遭い、放射能事故の恐怖に怯えながら出産を迎える。
私としては、続きが知りたいのと、奥さんの手記もよんでみたい。そして、スーダンという内戦で荒廃した国がどのように復興していくのか、そしてそれに対して彼はどのように彼は関わっていくのか(関わらないなら関わらないでもいいのだが)、そういう続きを読みたくなった。ダルフールに関する記述は本書にはほとんど記載されていないのだが、イスラム系住民としては余り書くことができなかったのだろうか。