レバレッジリーディング

レバレッジ・リーディング

レバレッジ・リーディング

この本はすべての読書をする人にとって有効な指針を与えてくれるものではない。ビジネス書をいかに効率よくよみ、それを生かすかという本である。
本書でもはっきり述べているが、ここでいうビジネス書は、学者の難しい本は対象外であり、成功した経営者の経験についての本のことをさす。学者の本は投資初心者が投資のアドバイスを述べるようなもので、役に立たないという。しかし、著者はMBAのスクールで何冊も学者先生が書いた本を読んだはず。それはあまりな言い方ではないか。
しかし、経営ということに限定していえば、著者のいうこともわからなくはない。経営学は実際の経営に即役に立つというものではない。どちらかといえば、経営学は経営の学問になりやすい部分だけをすくいとり、精緻な分析を加えたものだ。それは経営に全く影響を与えないという訳ではないが、経営者の多くが抱える問題点、つまり売り上げをいかに伸ばし、よい商品を作るかなどといったことは、残念ながら解決することはできない。ビジネス本はそういう学問になりにくい部分を提供してくれるのだろう。成功した経験者の経験談、そしてその経験から得られた知見を知ることの方が、大切かもしれない。しかし、それは一方で危険をはらむ。どの程度の確からしさをもって、その経験者はその知見を述べ、それを一般化しているのかがわからない。そしてこの本もそのビジネス本の特徴を持っている。

本に投資したお金は必ず百倍になって返ってくる

という文書がこの本のいたるところに見受けられる。これは、真実ではないことは明らかだ。しかし、この本はそれが真実なのかどうかが問題なのではなく、「そう思い込む」ということが大切なのだということを言っている。つまり、一種の動機付け、少し悪い言葉を使えば、洗脳だ。同様のフレーズが他にもある。

成功する人は必ず本を読んでいます

冷静に考えれば、著者がすべての成功者にリサーチをかけている訳ではないだろう。だから、正しくはこう書くべきなのだ。

私がこれまで出会った成功者のほとんどは、本を読んでいます

しかし、これでは問題がある。読む人のモチベーションが高まらない。人は必ずしも正しいことを欲するのではない。たとえば、人を励ます場合は多少の嘘(誇張)はよい。と私も思う。しかし、私の性格故か、このような誇張は好感が持てないようだ。

肝心の読書術の方だが、この本ではビジネスのための読書法が紹介される。例えば、本を読む前には目的を持ってそれに集中して読む。そうすれば時間を大幅に節約でき、1日に何冊も読めてしまうようになると。これも、私には合わない。なぜならば、私は読書が趣味でもあり、ビジネスだけではないからだ。目的以外の面白いこと、すなわち脱線した内容の方が好きなことが多いし、それに時間をかけてもそれは趣味なのだからよい。
また、値段が安い本の方がよいという。経済の原則により売れる本は安い本であり、売れる本はよい本であるという考えにたっているからだ。これは、面白い視点であり、一理あると思う。ビジネス本はとくにこの原則が当てはまっていそうな感じは受ける。
私は本を読むのが遅いので、ふつうは何時間もかかってしまうが、この本は2時間ほどで読めてしまった。ビジネス本は2時間でよいという著者の主張は案外妥当なのかもしれない。