「フェルマーの最終定理」サイモン・シン著

名前の仰々しさの割に、定理そのものはとてもわかりやすく、かつ何百年もの間、証明を拒んできたのが、「フェルマーの最終定理」だった。多くの数学者たちが一歩一歩その証明に近づき、最後はフェルマーが様々な知見を統合して、証明を果たしていく。フェルマーの話は実は本の中では4分の1程度だろうか。むしろ、それ以外の数学者たちの生き様が描かれているといったほうがよい。数学が持つ美に魅せられた人々が、さらに美を生み出し、追求していく。そこにはあまり「実用」という側面はない。美のために人生をかけていくのが数学者なのだろう。まるで芸術家のようだ。

ゲーデル不完全性定理が証明される一方で、数学の諸分野の大統一理論の試みがされているなど、数学も決してロマンを失っていないことに、わくわくしてしまう。それは、谷山・志村予想(現在ではモジュラー定理とよばれている)が楕円曲線論とモジュラー論の統一を図ろうとすることから、生まれ、フェルマーの最終定理はそのことに決定的に影響を与えたのだった。

仮に、宇宙人がいたとしても、きっと数学は宇宙人も同じような体系を持っているはずだといわれる。それは、数学が持つ客観性・論理性にあり、過去にピタゴラスが考えたように、おそらくそれは神が考えたこの世界の設計に繋がると考えているからだろう。大統一理論はその設計に近づくことができるのだろか?それとも、やはりそれは、不可知なのだろうか?

追い込みのこの時期に、夢中になって読んでしまった。

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)