メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年

乃木坂の国立新美術館にて鑑賞。お目当てはジョルジュ・ド・ラ・トゥールの女占い師だった。

https://artmuseum.jpn.org/onna.jpg

(西洋絵画美術館より)

中世の宗教画からはじまり、ルネサンス、そして印象派、ポスト印象派へと西洋美術史を概観できる。私は詳しくはないが、せっかく放送大学の学生になったので、美術館の割引を使ってみたかった。あと、私派の好きな「ぶら美」でも推されていた展覧会ということもあった。

この展覧会で一番見入ったのは、マリー・ドニーズ・ヴィレールの「マリー・ジョゼフィーヌ・シャルロット・デュ・ヴァル・ドーニュ」である。

ja.wikipedia.org


全くの無名画家が描いた肖像画である。女性画家ということもあるのか、不幸なことにジャック=ルイ・ダヴィッドという有名画家の作品とされてきた。
https://ja.wikipedia.org/wiki/女性アーティスト#芸術史における女性の不当な扱い

この肖像画は、なぜか逆光で描かれている。これはとても奇妙なことだ。「ぶら美」でもふれられていたが、女性画家は女性の肖像画を注文されることが多かった。なぜかといえば、女性は「女性がそうであってほしい」という美しさを盛って書くことができるからだという。しかし、この絵はその法則に合っていない。

この女性は逆光の中で、すこし微笑んでいるようにもみえる。しかし、逆光なのだから、幸せに包まれているようには見えない。窓の外には男女の姿があり、なぜかその窓は割れている。彼女は窓からその男女をみて絵を描いていたようだ。その途中で、身を屈めた横向きの姿勢から、こちらを見ている。

この絵を発注したのはここに描かれている女性だとしたなら、なぜこのような場面を選んだのだろう。そして、もっと美しく幸せそうに描かせなかったのだろう。

マリー・ドニーズ・ヴィレールはwikipedia日本語版には記事がないが、英語版には記事がある。この作品は彼女が27際の時の作品で、そのときにはすでに結婚をしていたようだ。通常、女性画家は結婚をするとプロの画家としては引退することが普通だったようだが、彼女は夫のサポートもあり、プロの画家を続けることができたとある。

ルーブル美術館にも所蔵されている彼女の作品がある。黒いドレスとベールをかぶった女性が、靴紐を直そうとしている所を描いている。

artsandculture.google.com

タイトルが A study of a woman from natureというらしいが、何のことか全く分からない。肖像画としてはやはり奇妙だ。他にもいくつか作品があるようなので、日本に来たらぜひ見てみたい。

なお、隣に展示されていたのは、同じ女性画家のエリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブランによる「ラ・シャトル伯爵夫人」であった。あまりに普通の美しい女性の肖像画で、それよりも二回りは大きいマリー・ドニーズの作品の異様さが際立っていた。