映画の見方がわかる本 (ISBN:4896916603)

アンテナにいれている町山さんの本。一般的に難解といわれている映画について、その周辺の情報からどういう意図でそういうシーンができたのかということを解説する。
まず、2001年宇宙の旅について。これは当初はすごくわかりやすい映画だった。しかしキューブリックが説明を極力排除してしまったが故に、様々な解釈を生むきっかけを与えてしまった。そこで、当初の台本を元にしてこれはいったいどういう経緯で生まれたシーンなのかを書いていく。
わかりやすい。大変いい。しかも、なぜテーマ曲が「ツアラトゥストゥラはかく語りき」なのかという問題に、すべて謎が修練していくところがすばらしい。
「タクシードライバー」に至っては映画すら見たこともないのだが、これを読むとめちゃくちゃ見たくなった。
「ロッキー」は映画史にとって一つの転換点だったことや、「ダーティーハリー」は反動的な主張を目的にしていたこと、「フレンチコネクション」に見られるアメリカの警察官の実態、などなど、アメリカがどのような社会なのかを如実に反映する映画が、これほどあったとは、少し映画を見直した。(でも古い映画ばかりだけど)
一番興味深いのは「時計仕掛けのオレンジ」。オレンジとは人間のことらしい。つまり国家によってコントロールされた人間という意味とのこと。
人間の原初的な破壊的衝動に批判的な人間ですら、その破壊衝動は持っているという、人間のダークな側面を徹底的に暴き出した作品である。(あるいは人を支配下におくことは良くないと思っている人間ですら、人を支配下におく快感を持っているという事実)
これは、いい。というか、すばらしい(映画も見ていないのに・・・)。この映画をみて、レイプした人が出たなどといっているが、それはこの映画のほんの表層しか見ていない。むしろ、これは理性的な人間といわれている人たちに対する挑戦状なのだろう。
人間はとても危ういバランスの上に立っている存在なのだ。だから外部からの刺激によって人格が形成されてしまう。それは生まれつきに悪魔だという存在を否定する。すなわち、みんなその種を持っているということだ。

とにかく、みてみたいよぉ。レンタル屋さんに行ってみるか。