図説満州帝国 ふくろうの本 (ISBN:4309725562)

満州国の建国を日清戦争から終戦まで書いた本。とくに日清、日露戦争満州事変の話が参考になった。
なかなか日清戦争の経緯というのは知る機会がないが、この戦記を読むとなぜ日本が「精神論」を重視し出すのかよくわかる。あまりに、清国は弱腰で脆弱だった。そのため日本はあっさり勝ってしまうことが多く、日清戦争は一方的になった。
日露戦争はかなりの苦戦を強いられたが、それでも勝ってしまった。「敢闘精神」の勝利だったと考えたのかもしれない。しかし、日露戦争の指導者は日本の実力をしっかり把握していた。だから、戦力の極限点に近い段階で戦争を終えることができ、さらに三国干渉にも耐えることができた。
しかし、満州事変以降の日本は思い上がりによる極端な拡張主義によって自ら滅んでいくことになる。
他民族との協調など全く考えにもつかない軍の独走で、満州は日本の領土になってしまう。政府や天皇も事後で承諾する。その後、日本の領土とすべく、傀儡国家としての満州国を設置した。さらに華北へと進出し、もはやどうにもならなくなった時点で、さらにアメリカと戦争をする。まったくもって自壊したというより他はない。
極端な自民族中心主義(エスノ・セントリズム)が、戦後、極端な民族主義への嫌悪になってしまうのは、残念なことではあるが、極端な自民族中心主義が亡国の一歩手前までいったことは事実であり、まだましだ、と思うのは私だけだろうか?