世界経済

  • 実体経済貨幣経済の分離が1971年頃から始まり、現在は貨幣経済が急速に肥大化している。これを何とかできないかというのが、先生の研究内容
  • 経済学はミクロ経済学マクロ経済学からなり、ミクロは主に価格決定の仕組みを研究する学問である。これは市場経済を重視する考え方であり、需要と供給のアンバランスが生じた場合は、市場が自動的に調整を行うという考え。政府の介入はすべきではないという主張につながり、社会主義に代表されるような計画経済と真っ向から対立する。新古典派経済学が主流。
  • 一方、マクロ経済学は、所得決定の仕組みに着目し、市場の失敗を重視して、政府の介入を積極的に評価する。価格は硬直性があるとし、短期的には価格は変動しないとする。ケインズ経済学が主流であるが、現在は人気を失っている。小泉構造改革とは対立する考え。
  • グローバリゼーションとはモノ・カネ・ヒトが国境を越えて自由に移動できるようになっていること。このうち、モノの移動が実体経済に対応し、カネの移動が貨幣経済に対応する。ヒトは一番交流が進んでいない。主な理由は言語など文化の違いである。
  • 裁定取引とは価格差を利用して利ざやを稼ぐこと。ようするに、値段の安いところで仕入れて、高いところで売ること。行商のおばさんが良くやっていることである。これが積極的に進めば、値段の高い地域で供給が増え、値段が下がり、値段の安い地域で供給が減って、値段が上がる。もちろん、輸送費コストなどが考えられるが、関税のない自由な取引が進めば、内外価格差が無くなり、世界的に一物一価が実現する。
  • 同時に、商品の内外価格差が無くなると、商品を生産する生産要素までが変動する。
  • 投機とは、時間的な価格変動差を利用する取引である。つまり、安いところで買い、高いところで売って、利益を得る取引である。安いところで買われるから値段は高くなり、高いところで売られるから値段は安くなる。よって値段は平準化されるから、投機は望ましいという考えがあるが、すべての取引者が同じ判断ができず、むしろ乱高下が増幅するという側面がある。(つまり、バブルと恐慌)
  • ちなみに、安いところで買い、高いところで売る、とあったが、順番は逆でも良い。つまり高いときに空売りをして、安いときに買い戻すというやり方もある。
  • 経済のグローバル化は、ヒト・モノ・カネ以外に制度をスタンダードにしていく。このスタンダードはたとえ不合理であっても、歴史的偶然として組み込まれてしまうと、不合理が拡大して標準になってしまう。キーボードの配列QWERTYがいい例である。
  • ローレンツ曲線とは、人工の累積度と所得の関係をグラフにしたもので、所得がどのように分配されているかがわかる。45度の直線になっていれば完全な平等社会である。この直線とローレンツ曲線との間の面積と、直線の終点からX軸への垂直線を引いた正三角形の面積の割合がジニ係数といい、この値が小さいとより所得の分配が進んでいることを示す。日本はこのジニ係数の値が大きくなっている。(詳しくはhttp://en.wikipedia.org/wiki/Lorenz_curve
  • 国際収支とは経常収支と資本収支、外貨準備増減の3つの大きな項目からなっている。経常収支は主に実体経済、資本収支は貨幣経済を表し、その差が外貨準備増減となる。日本は経常収支は黒字、資本収支は赤字で、外貨準備高は増加している。資本収支は経常収支が黒字になれば、たいていは赤字になる。これは円が海外に流出していることを示している。外貨準備高は実際は米国債であり、円高ドル安になると日本は資産が減ることを示している。
  • 通常、経常黒字になると円高になるので輸出は減る。よって経常赤字になり、円安になって輸出は増えるはずである。しかし価格が円高になって価格競争力が落ちても、需要がそれに見合って落ちなければ、むしろ経常黒字は拡大する。これをマーシャル・ラーナーの条件といい、需要量をX軸、価格をY軸にとったとき、傾きが-1より大きければ価格メカニズムは成り立つが、傾きが-1より小さいと、価格によって需要量の変動は小さいため成り立たない。
  • 国内総生産GDP)とは一年間で国内で生産された付加価値の総和である。この付加価値分はいわば供給の総和である。一方、総需要は、消費または投資、税金、政府支出である。よって、総供給=消費+投資+政府支出という式が成り立つ。これをY=C+I+Gと表す。
  • これに貿易を含めると、輸入が供給、輸出が需要となるので、Y+M=C+I+G+Xとなる。Mを移項するとY=C+I+G+X-Mとなり、X-Mは経常収支となる。この経常収支が黒字になった場合、C+I+GはYよりも小さいことになる。このC+I+Gを内需とよび、経常黒字を減らすには内需を拡大することが必要になる。逆に、赤字になるとC+I+Gを小さくする必要がある。これを引き締め政策という。
  • 貯蓄(S)とは総供給(Y)から税金(T)と消費分(C)を引いた値であると定義される。よってY=C+S+Tである。これを前項の式に代入すると、C+S+T=C+I+G+X-Mとなり、X-Mについてまとめると、X-M=(S-I)+(T-G)となる。S-Iは貯蓄から投資を引いた値であり、これをISバランスという。T-Gは税から政府支出を引いた値であるから、これは財政収支になる。つまり、経常黒字はこのバランスに依存しているともいえる。日本は財政は赤字なのだが、ISバランスが極端に貯蓄に傾いている。アメリカはすべて赤字である。
  • このあとタイ通貨危機のビデオを見る。