世界経済

  • 国際分業(international division of labor)についての考えは19世紀初頭とかなり古い。1797年から始まるナポレオン戦争によってイギリスが大陸封鎖され、穀物が入らなくなったことをきっかけにして、食糧の自給をすべきか、それとも今まで通り大陸から安い穀物を輸入するのかという論争がおこった。これは現在における食料安全保障だとか、自給率の問題などといわれることと同じ種類の論争であり、いまでも盛んである。このとき、リカードは「経済学原理」を表し、国際分業が最も効率がよいとし、保護主義を唱えるマルサス(「人工論」を著した)と論争した。
  • リカードは各国の総労働者数と財を生産するのに必要な労働力の関係から、生産性が比較して高い(絶対値として高いのではなく)場合、貿易によってより大きな利益が生じることを表した。これを比較優位の原理(principle of comparative advantage)という。各国はそれぞれ自国にとって比較優位の生産のみだけに特化すればよい。(もちろん食料安全保障など、農産物を外国に依存することによるリスクなどは考慮されていない)
  • 日本はフルセット型産業構造といえ、自国における自給の割合が高い。よって、過当競争と貿易収支の黒字を生んでいるといえる。(食料はともかく)
  • 自由貿易は先ほど述べたように、消費者にとっては非常に利益が高い。しかし、消費者は数が多いため、広く薄くしか広まらない。一方、生産者の損失は狭く深くなる。つまり、消費者の利益を再分配する必要がある。
  • 関税でなく、生産補助金を投入することにより、自国の財の生産性を上げることができる。よって、価格競争力が高くなるが、一方で、このような補助金制作は消費者からの合意が得られにくい。また、この補助金によって生産効率の改善が見込まれないのであれば、補助金はいつまでも必要になり、何の意味も持たない。
  • GATT(General Agreement on Tariffs and Trade:関税と貿易に関する一般協定)はWTO(World Trade Organization)に発展し、財だけに限らず、サービス(GATS)、投資(TRIM)、知的所有権(TRIP)を扱うようになった。
  • 最恵国待遇とはある国との協定を結んだ場合は、その国以外の国とも同様の協定を結んだことを意味する。
  • 内国民待遇とは自国と外国のものを差別することなく扱うことをいう。これはいわゆる「郷には入れば郷に従え」というものであったが、今はむしろ「市場アクセス」という名前で、グローバルスタンダードへの統一と規制緩和が主張されることが多い。
  • 互恵主義とはある自国にとって有利な関税を減らせば、相手国に対して有利な関税を減らすというものである。
  • 日米半導体協定というのがあり、半導体の外国企業シェアを20%以上にするという協定が結ばれたことがある。これは関税の引き下げという「機会の平等」ではなく、「結果の平等」(アファーマティブ・アクション)をねらっている。また、報復関税として半導体ではなく、電動工具やカラーテレビなど関係のないものにかかったことも注目すべき店である。
  • 数量制限は撤廃しなければいけないが、セーフガードという一時的な輸入制限が可能である。これは本来緊急的な措置であり、自由貿易のためのセーフティーネットである。中国に対して発動されたセーフガードは論議を呼んだ。
  • このような自由貿易主義を唱えたのは、ハルノートで有名なCordel Hullである。彼は「商品が国境を越えなければ軍隊が国境を越える」と唱えた。また、それまでの孤立主義モンロー主義)を捨てたことでも転換点となった。
  • タイのバーツ危機で明らかになったのは。マンデル=フレミングモデルと呼ばれるトリレンマである。これは、固定相場制と資本移動の自由化、金融政策の独立性は同時に存在し得ないということである。なぜなら、金融政策の独立性によるマネーサプライ通貨供給量)の調整は、資本移動の自由化によって反動する動き(資本の流出)を示すため、固定相場制を維持できないからである。
  • 例えば、G7諸国は固定相場制を捨てているし、EUは域内に対して金融政策の独立性を放棄した。
  • このあと、EUにかんするビデオを見る。