終戦のローレライ

何とかこの日を一日費やして読み切る。上下併せて1100ページを越える大作で、この日を含め、数日を費やす羽目になった。
読んで、まず始めに思ったことは、

こりゃ、映画はしょぼく思えるわな

ということ。また同時に、この小説はやっぱり映画にすることはほぼ無理だろうとも思った。こう、心を動かされるなにかが、映画には決定的にかけている。やっぱり、主人公達の心の変化がこの小説の醍醐味だと思うのだけれど、それがほとんど映画からは感じられない。
やはり、というべきか、映画よりもさらに「亡国のイージス」に似ているのだが、それでもなお、賞賛に値する作品だと思う。
この作品を読むと、事実として語られている歴史をちょっぴりアレンジして本編に取り込んでいるため、読者はうまくミスリードされる。歴史に詳しい人はどこかの文献でこの文章は読んだことあるな?ってのを見つけるはずだ。
(以下、ネタバレです)

残念というか、難しいのが、やはり朝倉の意図。東京に原爆を投下し、皇族を始め、日本の戦争指導者、エスタブリッシュメントを根絶やしにする。さらに本土決戦の泥沼に持ち込み、日本人の人口を減らすことで、アメリカの属州となる。それによってはじめて日本の再生がなる。
つまり、ユダヤ人のようになって、アメリカを内部から支配しようということらしいが、これでこの人の立場が理解できるのだろうか?
たしかに、この人は人肉を食べなければいけないような極限のガダルカナル島(おそらく)に放置されたことにより、そのような意図を思いついたとあるが、それにしてもわからなさぎる。
むしろ、戦争を終結させるために天皇がじゃまになり殺そうと企んだ、くらいのほうがわかりやすいのだけれど。どうせ、裁判で無罪になるだろうから、私は殺したかったとか。
となると、艦長は天皇を守るために・・・って、それだと今の私たちには艦長に気持ちを入れることが難しくなるかもしれない。でも、それくらいの方が良かったんじゃないかな?

とにかく、読了感は最高によかったので、おすすめ。

終戦のローレライ 上

終戦のローレライ 上