32歳ガン漂流エヴォリューション

前日によんだ本の続編.当然ながら病気は進行(evolution)している.症状は悪化し,諦めのような表現,例えば「人生最後の免許証」というような言い方が多い.病気を受容したということだろう,ということだが,残念ながらそんな気持ちは健康な私たちには理解できない.前回の頃の方がまだ理解できた.
この本では同じ病室で同じ病気と闘っていた戦友が次々と斃れていく様を描いている.その中の一人にあるラーメン店の店主がいた.彼の看護婦を泣かせるなど傍若無人な振る舞いは,著者も頭に来ていた.しかし,このおやじさんがあるラーメン店の店主であることを知ると,そのラーメンのファンだった著者と仲良くなる.しかし,おやじさんは治療方針の意見の相違から,病院を退院してしまう.著者は気がかりなのだが,なぜかそのラーメン店に行って近況を聞くことができない.
そして,勇気を出してラーメン店に入り,おやじさんの容体を聞くとすでになくなっていることを知る,著者はなぜもっと早く聞かなかったのだろうと後悔する.
私はこの気持ちがものすごく良く理解できる.私の父親の時もそうだった.父が悪いのはよくわかるのだが,怖くて聞けず,逆に距離をとってしまうのである.本当は色々聞きたいのだが・・・.そして,後で後悔をする.どんなことをしてももう帰っては来ない.
この本は前作に比べ,淡々とした調子でつづられている.悟りきったような文章は確かに進化(エボリューション)の名前にふさわしい.病気と症状の事実だけが悲惨だが,それに対してもあまりに淡々としている.それはとても自然であり,もうフィルターも何もないように思えた.

32歳ガン漂流 エヴォリューション

32歳ガン漂流 エヴォリューション