事業計画書作成のノウハウ

元ネイリストの中小企業診断士である渡辺まどかさんが講師になり、事業計画書とは?のような話から資金繰り表というところまでかなり広い内容を説明していただいた。
まず、そもそも講師の先生の自己紹介から、その戦略があまりにも正しいことに感心する。「元ネイリストの中小企業診断士はおそらく私一人しかいません」というアピールは強烈であり、希少性の原則からして、極めて有効に資格を活用していると思った。聞いた人は絶対に忘れないアピールだと思う。
講義の内容はとても練られていて、良くできていると感じる。
とくに事業計画書は共感度が重要だという示唆は、良い収穫だった。それまで、事業計画書というのは、融資担当者向けに必要なものであり、実現性を数値計画で示すものだと思っていた。ただ、よく考えれば数値計画を厳密に行うことは無理であり、新しい事業であれば、数値計画が曖昧になるのは致し方ない。そうではなく、それよりも経営者が何を考えて、そのビジネスプランがいかに妥当なものか、魅力的なものかを伝え、共感してもらうものなのである。そのためには事業計画書の最初の1ページと2ページ(≒事業コンセプト)に力を注ぐというのも納得である。さらにいえば、数値計画とか言っているが、そんなものは客観的な数字でもなんでもない。その数字も要は経営者の考え、思いの現れなのである。
また、事業計画書は第三者が第三者に説明できるものでなければならないという。つまり、経営者個人の頭の中の思いを、わかりやすい図や文字にすることによって、他人を巻き込んでブラッシュアップすることができる、ということである。ただ、講義にはそうすると想定問答に全て答えられるとあったが、「全て」というのは少し言い過ぎかな?
次に、ビジネスプランの説明があった。つまり上記の思いを実現するために、具体的にビジネスとして成り立つものなのかを幾つかのポイント(観点)から整理し、かつ、イメージしやすい内容にする(具体的なわかりやすいものにする)ということであった。だいたいよいと思うが、私はポイントの中に、リスクファクターを入れたほうがよいと思う。つまり、この計画を実行する上で、もしかするととてもうまくいくかもしれないが、非常に悪い結果を及ぼしかねないこと、事業を継続させる上で困ることの記述のことである。外部環境や内部環境などにいろいろあると思う。マイナスのことであるが、それがほんとうに共感を得られる事業計画書ではないだろうか?
最後に、資金繰り表の説明があったが、時間がなく簡単に終わった。講義では資金繰り表は事業を継続するために必要とあったが、事業計画書作成時点で必要なのは、ビジネスプランの利益などの裏付け資料、つまり、具体的な日々の数値目標を意識し、実現可能であるということのアピールではないだろうか。
また、講義では資金繰り表は損益計算書で入力した数値をベースに作るとあったが、それは論理的には正しいが、実務的ではない。これは、将来的なキャッシュ残高のシミュレーションを行なって資金がショートしないようにするための資料である。つまり、想定の損益計算書から作るということでなければならない。
色々書いたが、これだけ私がまじめに聞いた講義も珍しい。非常に人を引きつけ、関心を持たせることに長けた講義で、とても感心した。この発表と資料自体が、最初の方に重要な人を引きつけるストーリーを記述し、かつ第三者から多くのブラッシュアップを受けているのないかと思う。つまり、この講義資料自体が事業計画書のモデルにもなっているのだろう。