昭和史 1926−1945 半藤 一利 (ISBN:4582454305)

やや口語体であることが読みにくいが、一気に読めてしまう。内容的には(私は)メチャクチャ新しい内容というのは少ない。しかし、最近はやりの「石原完爾」や「広田弘毅」の持ち上げや、「海軍善玉論」などに批判を加えていくのが、いい。
で、日本がいかにダメな決定をして、それまでの繁栄を一気に捨ててしまうのかが語られる。ミッドウエー海戦なども参謀にいえば単なる軽侮が原因だという。酷い話だが、緒戦の勝利にあまりに浮かれてしまったことによるらしい。
ここにも、下士官は勇猛だが将校は無能だということ*1を感じる。無能な戦争指導者によって「赤紙」一枚で命を捨てなければならなかった前線の兵隊があまりに哀れである。
特攻の真実も初見だった。特攻創設の父といわれ鬼とまでいわれた参謀長は実は単に上から命令されていただけという真実。結局は上層部が責任をなすりつけただけ。日本の会社の構図のようだ。
東条はサイパンが陥落し、天皇に首相を罷免された後にこういったという。「日本が負けるなどとは思わなかった」と。こんな指導者では、亡国するしかないだろう。しかし、目立たなかったといわれる東条がのし上がってきたという背景には、彼のような思想は特段珍しいものではなかったということも示している。勇猛が過ぎれば、傲慢になり、足下をすくわれることになる。今までの歴史で何度も何度も繰り返されてきたことである。著者はいう「結局バブルの崩壊も同様の現象だったのではないかと」

*1:同じ著者の「ノモンハンの夏」という本に出てくる、ロシア将校の言葉