31歳ガン漂流

amazonでついに入手し,読む.話し言葉に近い形で書かれているせいか,あっという間に読んでしまった.
タイトルに「漂流」とある.つまり,自分で櫂を使って前に進むというのではなく,漂っているのである.ガンという病気は自分の意志で治すことはできない.だれか,すなわち医者に救ってもらわなければ,どうしようもない.
そして,漂流している人は,孤独である.前にも書いたが,病気をしている人は孤独に襲われる.この苦しみは誰にも共有してもらえない.口では同情されても,痛みが減るわけでもない.

内容はweb日記の内容を再編集したものである.病室での出来事を中心に,周りの人たちの様子が描かれていく.だが,ココで書かれていることはあくまでも私たち向けに発信された物語であり,著者がどのように感じたのかはフィルターがかけられているはずである.おそらく,死への恐怖なども有ったに違いないが,それほど書かれていない.だが,彼の苛立ちと怒りがこの日記には溢れている.それは,他の患者や医師,看護婦だけでなく,時には自分の体そのものにたいしても向けられる.だから間接的に読者は,著者が追いつめられていく様子を知らされることになる.

私はこの本を読んで,怖くなった.はじめはこの本から前向きな何かを感じようと思ったが,むしろ現実の残酷さを突きつけられたのである.つまり因果応報ではなく,単なる偶然によって,すなわち宿命のようなものによって大いなる苦しみを受けることもあるということである.

31歳ガン漂流

31歳ガン漂流