輪島塗

そのあと,「工房長屋」へ.ここは輪島塗の工程を体験する施設と,実際に職人さんが作業されているところを見学することができる長屋から成り立つ.この長屋は比較的低料金で職人さんに貸し出され,寝泊まりをすることができる.これはベンチャーにおけるインキュベーター(孵化器)の役割を持たせているとのことらしい.
その中で,沈金師や蒔絵師さんのお話を聞くことができた.沈金師の方は箸置きに小さな彫刻刀のようなもので金魚の模様を作っておられた.沈金とは漆器に傷を付け,そこに金を埋めて模様を作り出す作業である.
驚いたのは,箸置きの本当に小さな模様を作るのに,なんと一日かかるとのこと.ということは,箸置きは最低で見積もっても2万はするはず.でも,こんな事を知らなかったら,絶対2万は払えない.だが,このお話を聞くと売店で売っていた1万数千円の沈金のケースがずいぶんやすく感じる.商品に関する思い入れが何もなくて,情報を全然知らないのとでは,商品の価値に対する感覚というものが違うものになることを感じた.